『ユナイテッド93』United 93/ポール・グリーングラス監督/新宿武蔵野館

衝撃。映画館で見るべき作品。いわゆるドキュメンタリータッチの作品で主役がいるわけではない。
ユナイテッド93便は9.11の時にハイジャックされた4機の飛行機のうち攻撃目標(ホワイトハウスといわれている)に到達せずに墜落した機のことです。機内と各管制室、軍なのど地上施設にいた人々の行動を墜落するまで追った映画でした。
この映画のポイントは手持ちのカメラなどを駆使して、臨場感を最大限引き出しているところです。それによりそれぞれの状況が胸に迫り、否が応でもこの問題に自信の身を置いて考えさせられてしまいました。
アメリカ人は基本的に正義感の強い人種のような気がします。ただ、その正義感がアメリカ主体のもので、価値観が違う相手にもそれを押し付けようとするのが特徴です。
それと実際のテロ実行犯である四人も犠牲者であると実感させられた。
乗客たちはハイジャックされた後電話などで世界貿易センタービルペンタゴンに飛行機が激突したことを知る。今目の前で起こっている恐怖の現実と外で起こっているかもしれない現実。そのとき人間はどうしなければならないのでしょう? この映画ではその現実から目を背けなかった人々が描かれています。

この映画の特徴の一つに「上層部を描いていない」というのがある。軍も現場レベルでのシーンばかりで上層部がどう判断を下すか検討しているシーンや、政府がこの事件をそうとらえてどう行動しているかは一切描かれない。そして最後のテロップにも軍の上層部がハイジャックを認識したのは墜落の4分後、大統領のハイジャック機攻撃許可は更に15分後にでたと結んでいる。上層部をわざと描かなかったことで政府や軍への批判になっているようにもとれた。だから、9.11の映画が作られると聞いた時には、アメリカの正義を正当化させるためのプロパガンダ映画になりやしないかと思ったけど、この映画に関してはそういったものは感じられなかった。

ユナイテッド93』の撮影に乗客の遺族はかなり協力的だったようです。機内での出来事は地上にかかってきた電話から推測するしかないのですが、変にドラマ性とか取り入れなかったために、機内で起こったことはかなりリアリティが高いと感じました。そのリアリティを高める為に撮影現場ではポイントとなる一部しか決まった台詞は用意せずにあとはアドリブだったそうです。
連邦航空局のベン・スラニーという人が映画の中でもかなり印象の強い演技を見せるが、彼の役をやっているのは本人だそうで、実体験したことをまたやってみせたわけです。うまくて驚きです。
不覚にも映画館で泣きそうになる。実際最後には周りから嗚咽も聞こえてきた。
それと、こんなドキュメンタリータッチの映画が撮れてしまうアメリカの技術力にも驚く。スタッフロールが流れている中、いつも席を立つところ、制作者とそれに協力した遺族と亡くなった人たちに敬意を表そうと思いスタッフロールが終わるまで観ていようと思ったが、直ぐに退屈になって出てしまった(←バカ)

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ユナイテッド93 テロリストと闘った乗客たちの記録 (光文社文庫)