『ある子供』ジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ監督 DVD

ベルギーの監督の作品。BGMを一切入れず、長回しを多用して淡々と、登場人物の心理を描写しています。
若い二人の間に子供ができるが、彼らには親としての自覚がない。母親には母性が目覚めて子供を大事にするのだけど、冒頭からして子供を抱いたままスクーターの後ろに乗って疾走するのである。子供を乗せて車を走らせているのに、車内で悪ふざけ。見ているこちらはイライラしてしまう。
若い父親は何が罪であるのかまるで実感が無い。だからあっさり子供も売ってしまう。その後もゆっくりじわじわと、自分の罪の意識を感じていくのだけど、それも自分が恋人に見捨てられてしまったからだったりする。この罪の意識の無さに慄然とさせられるが、現代においては何か異様なリアリティを持っている。自分自身の事も合わせて考えてしまう。
最後にやっと父親も自分の罪深さを実感するのだが、それは恋人が自分をまた受け入れてくれたからだ。これってかなり甘い話だよなと思ったが、彼は罪を実感した。実感したという事はこれから償う事ができるってことだ。だから救いがある。本来はそう簡単に罪は償えるものではない。茨の道はこれからなのだ。でも罪を実感できた事って本当に重要。この世で一番たちの悪いのは罪を犯しながらもそれを自覚できない事なのだろう。

ある子供 [DVD]