『ナッシング』ヴィンチェンゾ・ナタリ監督 DVD
ナタリ監督の作品『CUBE』は面白かった。『カンパニーマン』はまあまあ。そして一番好きなのは『CUBE』のDVDのおまけに入っている『エレベイテッド』という短編です。エレベーターの中だけで完結するモンスターの出てこないモンスター映画。『CUBE』は閉塞感とロジックの映画。『カンパニーマン』は記憶。『エレベイテッド』は不安の映画だったように思う。そして『ナッシング』は逃避と喪失と友情の映画かな。
カフカのような不条理の映画。二人の男が世間からつまはじきにされ、世界を消してしまう。彼らはありとあらゆる物を消し去る事ができるけど、生み出す事はできない。失っていく一方。で、彼らが最後に残した物はそれぞれのパーソナリティを象徴する物だった。しかしこれって逃避の行き着く果てってやつですね。
一見かなりアイロニカルな映画のように思えるけど、けっこう消化不良かな。
まっ白な空間にとり残されてしまった時の喪失感はなかなかのもので、良かった。
いつもスタッフロールが流れると、DVDを止めてしまうのだが、音楽がとても良かったのでそのまま流していたら、最後に続きがついていた。そこに描かれていたのは、何もかも消してしまったと思っていた二人だけど、実は消していないものがあった。と、希望を残すラストになっていた。しかしスタッフロール後にシーンを入れる手法は意地が悪い。知らずにいる人がかなりいるはずだ。映画館で観てたって席立っちゃうでしょ。