Christmas Sound Track 2006
毎年作っているクリスマスCD。今年も作りました。今回はなんと二枚組!
クリスマスに関係ない曲も入っていますし、英語苦手なので実は夏の事を歌っている曲でも解らずに入れているかもしれませんが、クリスマスの雰囲気に合う楽曲を集めたということでよろしく。
(このCDは友人に配りました。)
Christmas Sound Track 2006 "Christmas Eve"
- Turn Into Something/Animal Collective 6:29
- Sleigh Ride/Carpenters 2:38
- Christmas Day/The Beach Boys 1:48
- Jingle Bell Rock (Q-Burns Abstract Message Remix)/Bobby Helms 4:06
- Ain't That Right/G. Love 3:42
- Birds/Mock Orange 3:53
- Fine Time/Cast 3:06
- Everybird/The Boo Radleys 4:21
- Landed/Ben Folds 4:27
- Snow Angel/Ron Sexsmith 3:53
- Star Fruits Surf Rider/Cornelius 5:43
- Teardrop/Massive Attack 5:32
- Listen, The Snow Is Falling/Galaxie 500 7:49
- Have Yourself a Merry Little Christmas (Rondo Brothers Remix)/Rosemary Clooney 4:00
- Always and Forever/Space Cowboy 3:34
- Chains/Mercury Rev 4:22
- Með Blóðnasir/Sigur Rós 2:24
- Id/Clammbon 6:16
01 | 17 | 10 | 13 | |
05 | 07 | 09 | ||
15 | 08 | 12 | 03 | 16 |
04 | 06 | 18 | ||
11 | 02 | 14 |
- Turn Into Something/Animal Collective 6:29
初っぱなからクリスマスとは関係ありませんが、アニマルコレクティヴです。いかにもNYな風変わりな感じのバンドです。素晴らしいセンスでハッピーな感じのこの曲からスタートです。曲のタイトル「何かに変わる」のように変わっちゃってください。 - Sleigh Ride/Carpenters 2:38
二曲目からは正統派って感じでカーペンターズ! いかにもクリスマスですって気分になってきます。 - Christmas Day/The Beach Boys 1:48
ビーチボーイズと言えば夏の海ですが、クリスマスソングもけっこう歌っていますね。昨年のFuji Rockで数曲見ましたが、まったりした雰囲気でポップ。いい感じでした。 - Jingle Bell Rock (Q-Burns Abstract Message Remix)/Bobby Helms 4:06
iTunes Storeで見つけた"Holiday Lounge - The Christmas Remixes"より。Bobby Helmsはアメリカの古いカントリーの歌手らしいです。このRemixesのシリーズはあまり凝りすぎずに古い曲をMixしなおしていて良いです。 - Ain't That Right/G. Love 3:42
大好きなG.Loveです。クリスマスとは関係ありませんけど、いかにもクリスマスな曲が三曲も並んだ後なのでガス抜きです。クリスマスだからといっていかにもハートフルな曲ばかり聴いていてはだめです。"Ain't That Right"「だからといって正しいわけではない」わけです。 - Birds/Mock Orange 3:53
iTunesで見つけたMock Orange。詳しい情報はわかりませんがUSバンドです。サビの部分でファルセットになるヴォーカルとそれに重なるギターの音がめちゃくちゃ気持ちいいので採用。 - Fine Time/Cast 3:06
数年ぶりにiTunes StoreでCast聴いたらこんなにいい曲だったけ? と驚いてしまったのでクリスマス関係ないけど採用。爽やかな曲です。
The La'sを抜けたベースのJohn Powerが作ったバンド。The La'sの初来日公演のクラブクアトロでのライブ中ずっと不機嫌で一言もしゃべらなかったLee Maversでしたが、John Powerは曲の合間に何度もしゃべってくれて(英語なのでほとんど解りませんでしたが)とてもいい人でした。
- Everybird/The Boo Radleys 4:21
The Boo Radleysは90年代を中心に活動していたUKのバンド。初期の頃シューゲイザーだったころのいくつかの曲は私の宝物です。その宝物の中から一曲。この曲なんて何百回聴いたか解りません。これからも何百回となく聴いていくのでしょう、まったく商い曲です。ギターでソングライターのMartin Carrはあこがれでした。クラブクアトロでライブも二回見ています。(自慢) - Landed/Ben Folds 4:27
キレイで感動的。でもキレイすぎない曲と言ったらBen Foldsです。アメリカのピアノ弾きながら歌うミュージシャンです。彼のライブはBen Folds Fiveの時代に一回あるだけだけど、見事なライブパフォーマンスをみせてくれるエンターテイナーでもあります。 - Snow Angel/Ron Sexsmith 3:53
この曲はちゃんと冬っぽいでしょ。Ron Sexsmithはカナダ、トロント出身のミュージシャン。いい曲書くのですが、ステージで見るとおばさんパーマの太ったおばさんにしか見えません。今年の朝霧JAMでライブ見ました。天気もよくて最高でした。 - Star Fruits Surf Rider/Cornelius 5:43
Cornelius=小山田圭吾は間違いなく日本最高峰のミュージシャンです。特に彼のいくつかのRemixワークは素晴らしい。この曲はクリスマスツリーとクリスマスのイルミネーションを連想させるので入れました。曲名はPrimal Screamの同名曲からいただいてますね。 - Teardrop/Massive Attack 5:32
UKのバンド。今年のサマーソニックでライブ観ました。Massive Attackの曲はどれも静かなクリスマスの夜が似合います。この曲はしんしんと雪が積もっていく夜の雰囲気でしょ。Snowdrop - Listen, The Snow Is Falling/Galaxie 500 7:49
Galaxie 500はアメリカのバンド。今は解散しています。サイケデリックテイストのギターが大好きです。この曲はタイトルがいいでしょ。いかにも冬っぽいし。この曲はベースのNaomi Yangが歌ってます。再結成してFuji Rockでプレイしてくれたら最高なのですが。もちろんホワイトステージのトリで。 - Have Yourself a Merry Little Christmas (Rondo Brothers Remix)/Rosemary Clooney 4:00
これも"The Christmas Remixes"シリーズの"Holiday Chill - The Christmas Remixes"から。ローズマリー・クルーニーはビング・クロスビーなんかの時代の古いアメリカの歌手らしいです。この曲はオリジナルをそれほど変えていません。 - Always and Forever/Space Cowboy 3:34
クリスマスパーティー向けにダンスミュージックを一曲。Space CowboyはUKのイケメンDJ。一昨年Fuji Rockでプレイ観ました。踊らせてくれました。この曲を選んだのは曲名が「いつも永遠に」みたいな感じで良かったからです。 - Chains/Mercury Rev 4:22
Mercury Revはアメリカのバンド。大好きです。なんか賛美歌をサイケデリック風に仕上げている感じでクリスマス向きでしょ。昨年のFuji Rockに出たのに裏のメンツが凄すぎて観ませんでした。私はBeckとFatboy Slim観てました。(Dinosaur Jr.とも被せてました…) - Með Blóðnasir/Sigur Rós 2:24
「今現役で活動しているミュージシャンで一番好きなのは?」って聞かれたら、「Sigur RósとMogwai」って答えます。大好きです。Sigur Rósはアイスランドのバンド。「寒くて美しい」私にとって永遠のバンドのひとつ。去年のFuji Rockでのホワイトステージのライブが素晴らしかった。私はCD作るとたいがいクライマックスの盛り上げにSigur Rósを使ってしまいます。ワンパターンだけどやめられない。 - Id/Clammbon 6:16
一枚目のトリはクラムボンです。今年の朝霧Jamで観たステージに感動したのでトリです。原田育子嬢のヴォーカルはライブで聴くともっと素晴らしいです。この曲聴いていれば最高のクリスマスイブがすごせるはず…
Christmas Sound Track 2006 "Christmas Day"
- The Christmas Song/Aimee Mann 3:19
- I Want You Back/Jackson 5 2:59
- She Moves In Her Own Way/The Kooks 2:49
- Futarigoto/RADWIMPS 4:19
- Hikari wa hikari/100s 4:20
- The Fox In The Snow/Belle & Sebastian 4:11
- I'll Be Home for Christmas (Ohmega Watts Remix)/Charles Brown 3:44
- Winter Day Song/Cymbals 3:55
- You Can Have It All/Yo La Tengo 4:36
- How to Bring a Blush to the Snow/Cocteau Twins 3:52
- Bitter Sweet Symphony/The Verve 5:58
- Life In the Day Of (Pt. 1)/Weekend 3:49
- Winter/The Rolling Stones 5:30
- Soul Love/David Bowie 3:33
- Tsuki to rakuda no yume wo mita/Uri Nakayama 4:59
- Big Bad Bingo/Flipper's Guitar 6:13
- Hoppípolla/Sigur Rós 4:28
- Memory Of A Free Festival/Mercury Rev 5:12
16 | 18 | 09 | 12 | |
04 | 06 | 08 | ||
14 | 07 | 11 | 02 | 15 |
03 | 05 | 17 | ||
10 | 01 | 13 |
- The Christmas Song/Aimee Mann 3:19
エイミー・マンはアメリカのミュージシャン。昨年の朝霧Jamでライブ観ました。良かった美人だった。今年はクリスマスソングのカバー集を出してくれたのでその中から一曲。 - I Want You Back/Jackson 5 2:59
パーティソングと言ったらジャクソン5です。彼らにはクリスマスソングがいくつもあるのですが、この曲にはかなわないので関係ないけど採用。一気に楽しい気分になれます。 - She Moves In Her Own Way/The Kooks 2:49
UKのバンド。実は今年知ったバンドの中で最大の収穫がこのThe Kooks。やっぱ自分はUK好きなんだと再認識。特にこの曲はPOPなのにまったく飽きがこない。サマソニにライブ観に行ってしまいました。 - Futarigoto/RADWIMPS 4:19
このバンドはiTunes Storeで見つけたのですけど、最近の新しめの日本のバンドではダントツにいいと思います。まだ歌詞が気恥ずかしいところもあるけど、これからもっと良くなって行くと思うし、メロディとギターがいいです。 - Hikari wa hikari/100s 4:20
この曲もクリスマス向けな感じ。生の中村一義は昨年のFuji Rockで観れたので満足。一義君はライブ中、平気でミスるんだよな… - The Fox In The Snow/Belle & Sebastian 4:11
スコットランドのバンド。彼らは一昨年のFuji Rockで2ステージプレイしてくれました。いい雰囲気のライブでよかった。この曲はいかにもなタイトルで、クリスマス向けでしょ。 - I'll Be Home for Christmas (Ohmega Watts Remix)/Charles Brown 3:44
これも"Holiday Lounge - The Christmas Remixes"から持ってきました。チャールズ・ブラウンは昔のアメリカのR&Bの人らしいです。 - Winter Day Song/Cymbals 3:55
名曲です。土岐麻子嬢のヴォーカルは本当にいい! この曲は特に声にうまくベースとギターの音が絡んでいて気持ちいい。 - You Can Have It All/Yo La Tengo 4:36
USオルタナティブの重鎮Yo La Tengo。彼らの曲はフィードバックがガンガンにかかったものが好きだけど、これはコーラスが印象的なすてきな曲。Ira Kaplan(オッサン)とJames McNew(巨漢)の二人がキュート? な踊りをしながら、コーラスをする有名な曲。クリスマスっぽいでしょ。 - How to Bring a Blush to the Snow/Cocteau Twins 3:52
- Bitter Sweet Symphony/The Verve 5:58
- Life In the Day Of (Pt. 1)/Weekend 3:49
- Winter/The Rolling Stones 5:30
- Soul Love/David Bowie 3:33
- Tsuki to rakuda no yume wo mita/Uri Nakayama 4:59
- Big Bad Bingo/Flipper's Guitar 6:13
- Hoppípolla/Sigur Rós 4:28
- Memory Of A Free Festival/Mercury Rev 5:12
『ナンバーファイブ(吾)』 松本大洋 小学館
Prologue
松本大洋の『ナンバー吾』。なぜこのマンガに惹きつけられるのだろう? ストーリーその物は極めて単純。
はるか未来に衰亡しつつある人類を導くエリート集団があり、そのシンボルとなっている平和部隊「虹組」の幹部達の追走劇である。幹部たちは皆、所属部隊のナンバーで呼ばれ、王をリーダーとしている。その中で、王の使用人だった、通称マトリョーシカという女をナンバー吾が連れ去り逃亡。王は彼を倒すために「虹組」のメンバーを刺客として送りだしていく。
今回は視覚的な部分から、からこのマンガの面白さを伝えられたらと思います。
videographic-memory and filmgraphic-memory
このマンガが視覚的、感覚的な部分に迫ってくる快感はかなりのものです。それは極めて映像的であるから。というのが結論なのだけど、もともと、平面的で紙芝居的だったマンガに、手塚治虫が映画のような演出を取り込む事によって、マンガの表現の質も幅も格段に広がり、近代マンガが始まった*1と言われていて、そこに今更映像的なマンガなどという事を言い出すのはいささか陳腐過ぎるけど、この松本の映像的マンガと、手塚や石ノ森章太郎*2たちの映像的マンガとの間には決定的に違いがある事は確かだと思う。その違いも感覚的なもので、簡潔に言えるものではないし、いくつかのシーンの一部を抜きだしてきて並べてみてもそこに違いを見るのは難しい。それぞれの作品を通読してみて感じられる事だからだ。だけど、手塚、石ノ森のマンガと松本のマンガの映像感覚の違いが生まれた原因を探る事はできる。それはテクノロジーの進歩に関係がある。巽孝之著「『2001年宇宙の旅』講義」*3という本の中にその鍵があった。巽氏は、
テクノロジーとレトリックの相互駆引は縁が深い。たとえばタイプライターが発明されなければヘミングウェイ*4のハードボイルド文体はありえなかった、と識者はいう。
『2001年宇宙の旅』講義」P42より
と書いている。つまり、手書きからタイプライターで書くという、道具の違いからくる影響によって文学作品に変化が起こったと言われているのだ。そして六〇年代的な想像力と九〇年代的な想像力の違いを解説するのだけど、その中で九〇年代的想像力とはどんなものか? というのをTVドラマ『ツイン・ピークス』を例に出してこう書いている。
デイヴィツド・リンチ監督*5が九〇年から九一年にかけて放映したカルトTVドラマ『ツイン・ピークス』冒頭、美少女ローラ・パーマー殺害後に展開される母親サラ・パーマーの回想シーンである。こんなシークエンスだった。事件の朝、二階へ駆けのぽったサラは各部屋をのぞきこんでまわるも、ついに娘を見出せない。やがてローラ殺害の知らせが入り、狼狽し絶望し意気消沈する彼女。だが、しばらくしてこの母親は、けんめいに「娘の消えた朝」のことを「思い出そう」とする。さて肝心なのは、まさしくこの「回想」の映像的表象そのものだ。というのも、その「回想」は、あたかもヴィデオテープを巻き戻すかのような「記憶の巻き戻し」によって進行し、その結果、サラは部屋の片隅、ベッドの陰にひそんでいたローラの真の下手人ボブのすがたを、まさしく記憶の片隅に「一時停止」させ「細部拡大」したうえで「(再)発見」するからである。かくして彼女は電話に直行していわく、「犯人を思い出したわ……」
このときパーマー夫人の記憶のかたちは、あくまで「ヴィデオ的」なるものの比喩だったのだろうか? そうではあるまい。リンチは、たぶん彼女の脳髄そのものを文字どおり「もうひとつのヴィデオデッキ」とみて表象しょうとしたはずだ。人間の記憶がヴィデオ的なのではなく、人間の記憶回路とはじつはヴィデオデッキそのものであり、それ自体カットアップ/リミックス/サンプリング自由自在の機械であること。『2001年宇宙の旅』講義」P44より
そしてビデオの様な記憶のあり方を〈ヴィデオグラフィック・メモリー〉と名付けている。
アナログビデオやフィルムの時代というのは、膨大なコストとプロフェッショナルなスキルが必要とされていた。今、デジタルビデオは簡単にパソコンに取り込む事ができて、それを切ったり、つなげたりと自在に編集でき、画像を加工する事も可能だ。それは個人の趣味としてもできるぐらい低コストで、習得するにもたいした時間はかからなくて済む。たとえデジタル映像の編集、加工をした事が無い人でも、現在はそういう事が可能であると頭で感じ、理解しているのだと思う。つまり手塚、石ノ森のマンガというのはフィルム時代の映像感覚で作られた記憶のあり方(フィルムグラフィック・メモリーと名付ける)で描かれていて、松本のマンガはデジタルビデオ時代の映像感覚によって作られた記憶のあり方(ヴィデオグラフィック・メモリー)で描かれていているのである。
「ナンバー吾」は松本の頭の中で一度映像として処理され、それを「ツイン・ピークス」のサラの記憶のように、カットアップ/リミックス/サンプリングして、それをマンガ媒体として出力しているのである。頭の中で処理した映像をまるでフィルム写真のようにマンガ媒体に印画していた手塚、石ノ森マンガとはそこが決定的に違うのだ。テクノロジーの進歩による、フィルムグラフィック・メモリーからヴィデオグラフィック・メモリーという記憶のあり方の変化が表現を変えてしまったのである。
「ナンバー吾」の中には映画のモンタージュテクニック*6のような構成、大胆な構図とトリミング*7、様々なレトリック*8が駆使されている。これは巽氏のいうヴィデオグラフィック・メモリーの産物なのだ。
そして一番重要なのは、松本のマンガを読むと、読者自身も自らのヴィデオグラフィック・メモリーと化した脳内で、映像として再編集しているのである。そうしてでき上がった映像がいかに面白く刺激的であるかは、人それぞれであろうが、その素材や要素の提供者としては松本大洋は世界でもトップクラスなのだ。
Mangatic symbol
映像的な表現を、初めて本格的にマンガに取り込んだのが手塚治虫なら*9、マンガ的記号を体形付けたのも手塚だ。マンガ的記号とは、図1のような汗とか効果線の事だ。しかし「ナンバー吾」は漫画的な記号が最小限に抑えられている。感情を表現する記号もあまり出てこない。しかし、キャラクターたちの感情や内面はしっかりと表現されている。スピード感を現す流線など皆無なのに、ちゃんとスピード感を感じる。これは手塚以上に映画的な手法をマンガに取り込む事によって、手塚的なマンガ記号が必要なくなったからなのだ。
松本のマンガを見て、イラストの様だと感じるのは、漫画的記号が少ないからである。
図1
(手塚治虫「ブラックジャック」より)
*1:実際はそんな単純なものではない。「手塚自身が、マンガ的な絵とコマの展開の革新をまずやり、そこに映画の手法を取り込んだ」と言われています。もちろん影響を受けたのは映画だけではなく演劇や小説からも大きく受けています。手塚がマンガに持ち込んだ革命的手法については、夏目房之介著「手塚治虫の冒険」(小学館文庫)に詳しく書かれています。
*2:手塚的手法を正統に受け継いで、それを更に発展させたのが石ノ森章太郎だと思う。
*3:平凡社新書。1968年発表の「2001年宇宙の旅」をキューブリックの映画版とクラークの小説版を比較しつつ、90年代サイバーパンク以降の感覚で読み解いた本。
*4:ヘミングウェイは「老人と海」「われらの時代に」などで有名な米国の作家。短編名手といわれている。「人的体験に基づいて簡潔な真実の文章を書く修練を重ね、のちに多くの作家に影響を及ぼしたいわゆるハードボイルドの文体をつくりあげた(日本大百科全書/小学館より引用)」
*5:デビッド・リンチは「ブルーベルベット」「マルホランド・ドライブ」などで有名な米国の映画監督。暗喩だらけのストーリー、美術センスの素晴らしさ、俗悪なものの描き方の巧さ、アイディアの面白さが魅力。
*6:複数の別の意味をもつカットをつなげ、それらのイメージをぶつける事によって、更に複雑で抽象的なイメージを見るものに想起させようとする手法。1920年代の旧ソ連で活発に提唱、議論された映画の理論。例えば前出の映画「2001年宇宙の旅」の中のシーン。猿人が初めて道具として使った骨を空に投げ上げ、その骨に重ねるように、宇宙船が宇宙を進んでいくショットをつなげ、人類の進歩、あるいは道具の歴史といったものを表現した。
*7:トリミングとは普通、写真のふちの切り落とし整形する事を言いますが、ここでは絵をどう切り取ってコマの中に収めるか。という意味で使ってます。
*8:巧みな表現をする技法のこと。隠喩、暗喩など。
『ターミナル』スティーブン・スピルバーグ監督 DVD
法律の隙間と国と国の隙間に落ちてしまった男の話。面白さはまあまあ。
信念を持った男が英雄になるって、極めてアメリカ的な話でもある。
しかし、そんなことはどーでも良く、空港に住むっていうシチュエーションが最高。空港って要は巨大ショッピングモールで、広くてきれいで、何でもあって(吉野家まで)、もちろん本屋もあるので、退屈しません。人がいっぱいで、プライベートが確保できないかと思ったら、改装中のスペースがあるのでそこに住めました。ここでの生活の様子を永遠とやってほしかったな。主人公の職業が建築業だったてところもうまいです。
空港内はいつも同じ温度なのだろうけど、外に出るとニューヨークは雪だった。なんかこの寒そうな雪が良くて、今までに見た映画の中でもかなり印象的な感じの雪でした。
待つことも、行くことも大事な事。
『ワールド・トレード・センター』オリバー・ストーン監督 吉祥寺スカラ座
「ユナイテッド93」がすごい映画だったので、9.11関連の映画はチェックしておこうと思って観ました。しかしTVCMではなんか感動作のように見えたし、監督がオリバー・ストーンだし…
で、観ましたがまさか警察官が生き埋めになる映画だとは知りませんでした。瓦礫の下敷きになった状態でほとんど身動きできず何時間も生きるために戦い続ける。冒頭で、実話であることが告げられているし、本当にあったことかと考えると、観ているこちら側も閉塞感で押しつぶされそうでした。
ありきたりな感想でしかないけど、人を救うという仕事の素晴らしさをを実感させてくれました。しかし9.11は人災なのでその報復も含めて、人の命を軽んずる決断をする人たちが多くいることも確かです。アメリカの大統領も一度生き埋めにしてみてはどうかと。彼はその凄まじさを想像もできないのでしょう。
オープニングに映し出されるワールドトレードセンタービルは、確かに目立つ存在でニューヨークの象徴のようなビルだったことがわかります。
9.11をテレビで見て単身乗り込んでいく元海兵隊員の姿が、良くも悪くもアメリカというものを象徴しているように思えました。
『朝霧JAM 06』2006/10/08 二日目
朝の富士山
朝霧の朝です。フジロックのときと同じように、朝の洗面所は大混雑しているので、歯磨きは昨晩買っておいたペットボトルのウーロン茶で行います。娘は限られた水、しかもウーロン茶で歯を磨くのにかなり不服なようでした。
ラジオ体操
朝霧JAM二日目の朝と言ったらラジオ体操です。いい大人がステージの前に自主的に集まって、ラジオ体操なんぞするものかとお思いでしょうが、ここの客は朝からテンションも高く、シャレがわかるので、かなり参加します。私も一緒に体操しました。娘は恥ずかしがってました、小学生なのに。
ミルクパニック!
今年はラジオ体操に参加した人に朝霧の牧場で採れた牛乳を配るって話でしたが、配り始めたとたん。皆牛乳に向かってダッシュ! 私も娘ともみくちゃになりながら、もらいにいきましたが数分で品切れ。早過ぎ。
娘には「いい大人が牛乳くらいでこんなに熱くなるのは、朝霧JAMとフジロックくらいだから。皆飢えているわけじゃないから」って説明しておきました。
本門寺重須孝行太鼓保存会
毎年地元の太鼓が出ます。今年も昨年に引き続き本門寺重須孝行太鼓保存会が出ましたが、女性が増えてますよね? しかも美人がたくさん。
Hocus Pocus
Hocus Pocus楽しかった。キャッチーな白人のHip Hop。楽しく踊らさせていただきました。アンコールしてほしかったけど、時間の都合で出来なかったのかな? でも機材片付けている間にまたステージにメンバーが出てきて挨拶してくれました。
娘はまだ10才なので、ステージが始まると退屈そうなので、この後は娘を遊ばせるのを中心にしました。
娘はススキ集めに夢中になってました。
ムーンシャインにあるマーケットではビーズの腕輪を気に入ったようで買ってあげました。ただでさえ可愛いのに、これ以上可愛くなってどうするのでしょう?
ムーンシャインへの道から臨む富士
Chris Pierce
レインボーステージの後方には海も見える!
Dachambo
Warrior Charge
テントを解体してるときにうかつにも泣きそうになってしまった。だって、娘とは、そう会えるわけではないし、離婚後二人で泊まりにいったことなんて何年も無かったし、それが二日間もずっと一緒にいられて、でももうすぐまた離ればなれかと思うと、泣けてきて… しかもステージから聞こえてくるmojave 3の演奏が、泣きのメロディばかりだし…
mojave 3
かなり良かったですよmojave 3。メンバーの見た目はなんかバリエーション豊富というか、変というか…
朝霧の夕日向こうは海
絶景かな赤富士
夕暮れになってくると、また雰囲気が良くて。赤富士が素晴らしく綺麗でした。さすが台風一過!
本当は一番見たかったのはV∞REDOMSだったのだけど、娘を元妻の家まで送り届けなければならないので、早めにバスに並んで帰らなければなりません。そんなわけで、BOREDOMSがV∞REDOMSになってからは一度もステージ観たことは無いけど、泣く泣く諦めて帰りました。
しかし、連休の中日だったせいか高速は大渋滞! こんなことは朝霧JAMでもフジロックでも初めて。結局終電ギリギリで娘を送り届けることが出来ました。
Miruz 娘(とってもいい子)
フジロックと朝霧JAMだけは一生行き続けたいな。
『朝霧JAM 06』2006/10/07 一日目
行きのバス車内
朝霧JAMでございます。昨日の台風もさって、昨年に続き今年も晴れ! ずーっと雨って印象が強かった朝霧も、開催日を後ろにずらして正解ですね。
今年も、自炊はしないのでメインのレインボーステージ後ろにテント張りました。
会場
実は今年初めて娘(10才)と二人で行きました。バツイチなので娘とは一緒には住んでいません。月に一回くらい会う程度。二人で泊まりにいくなんて初めてですし、楽しくて仕方なかったです。
朝霧は本当に気持ちのいい高原です。娘はテント張りからはりきってやってくれました。
まだ富士山には雲がかかっている
セカンドステージのムーンシャインの方の様子を見に行った帰り道、Ron Sexsmithとすれ違いました。昨年朝霧に来てましたが、そのとき買ったと思われる朝霧JAMのTシャツ着てました。なんか以前にもまして太っているような気が… なんかこういう雰囲気ってフェスっぽくていいです。
クラムボン
最初はクラムボンからスタートなんですが、開始三十分前のリハから3人とも揃って、15分くらいプレイしてくれました。素晴らしい! 昨年はOhanaだったので、原田郁子嬢のヴォーカルが少ししか聞けなかったのですが、今回は満喫させていただきました。
なんか年々涙もろくなってきていて、ライブ中に泣きたくなるなってことは数年前まで考えられなかったのですが、クラムボンのライブでもう泣きそうでした。(娘も一緒だったし)
Ron Sexsmith
次はRon Sexsmith。相変わらずいい曲ばかりでまったりします。ニュ−アルバムに入っていた、「All In Good Time*1」はすごくいい曲。
会場に着いたときには雲に覆われていた富士山のてっぺんもくっきり見えてきて、うっすらと頂上に積もった雪が見えて感激。
元ちとせ
実は一番期待していたのが、元ちとせでした。登場してびっくり。本物の彼女はとてもキュートでした。でやっぱ声がいい。全身で歌っている感じ。またもや泣けてきました。
朝霧のいいところはすごくステージが近くて、アーティストがすぐ間近で歌ってる感じ。こんなに近くで、元ちとせを観られる機会はそうは無いでしょう。最後の曲を歌い終わった彼女のが、身体全体をふるわせているのが見えました。
くるり
次はくるりですが、昨年のフジロックと昨年の渋谷AXと立て続けに観ている方ですね。初っぱなから「ワンダーフォーゲル」「ハイウェイ」「東京」と続けてそれが良かったですね。フジロックのときもそうだったけど、「東京」はやっぱり泣ける曲だ。
RKD1
でもって次はムーンシャインへ行って、RYUKYUDISKOのRKD1のDJでかなり気持ちよく踊っていたのですが、娘がもう既にかなり疲れたようす。楽しみにしていたJUSTICEですがあきらめることに。登場してすぐ「We are your friends, you will never be alone again. Come on!」をかけていたので、それ聞きながらテントへ帰りました。ですからもう一つ楽しみにしていたDJのErol Alkanも見逃しました。
月明かりと光る角
娘はキャンプの経験はあるらしいのですが、寝袋は初めてらしく、かなり気に入ってました。娘はもう寝ると言ったので、一人テントで寝かしておいて、私はThe Poguesを観にいきました。
それにしても今日は満月がくっきりと出ていて、富士山のシルエットの上に素晴らしく綺麗な月。最高の風景です。
The Pogues
The Poguesは去年フジロックで観ているのですが、Coldplayを観てから行ったので途中からでした。しかし復活自体がびっくりだったのに、二度も観られるなんて人生何があるかわかりません。
相変わらず酒を持って登場したシェーンは老人のようなヨタヨタ歩きで、マイクをマイクスタンドに差すことすらできません。でも、フジのときよりは長くステージに立ってました。
奇跡は二回目のアンコールのときに起きました。The Poguesには「Fairytale Of New York」というアイリッシュの移民たちのクリスマスを歌った、クリスマスソングの大名曲があるのですが、その曲をシェーンとデュエットしているカースティ・マッコールという女性が2000年にボートの事故で亡くなっていまして、フジではプレイされなかったのですよ。やっぱ彼女のヴォーカル無しではあり得ないので、もうプレイされることは無いと勝手に思っていたのに、女性ヴォーカル(誰かは知りません)がステージに出てきたときは興奮しました。
Fairytale Of New York
カースティよりは格段に落ちるヴォーカルでしたがそれでも生「Fairytale Of New York」は素晴らしかった。クリスマスでもないのに奇跡が起きたのかと思った。というか一足早いクリスマスだった。
dansing Shane
シェーンが彼女といつまでもクルクルとまわり続ける社交ダンスがいっちゃてるかんじで感じで笑った。
でもってその後にフィエスタ。最高の夜でした。
テントに戻ると娘はぐっすり寝ております。私もすぐに寝てしまいました。
『ナッシング』ヴィンチェンゾ・ナタリ監督 DVD
ナタリ監督の作品『CUBE』は面白かった。『カンパニーマン』はまあまあ。そして一番好きなのは『CUBE』のDVDのおまけに入っている『エレベイテッド』という短編です。エレベーターの中だけで完結するモンスターの出てこないモンスター映画。『CUBE』は閉塞感とロジックの映画。『カンパニーマン』は記憶。『エレベイテッド』は不安の映画だったように思う。そして『ナッシング』は逃避と喪失と友情の映画かな。
カフカのような不条理の映画。二人の男が世間からつまはじきにされ、世界を消してしまう。彼らはありとあらゆる物を消し去る事ができるけど、生み出す事はできない。失っていく一方。で、彼らが最後に残した物はそれぞれのパーソナリティを象徴する物だった。しかしこれって逃避の行き着く果てってやつですね。
一見かなりアイロニカルな映画のように思えるけど、けっこう消化不良かな。
まっ白な空間にとり残されてしまった時の喪失感はなかなかのもので、良かった。
いつもスタッフロールが流れると、DVDを止めてしまうのだが、音楽がとても良かったのでそのまま流していたら、最後に続きがついていた。そこに描かれていたのは、何もかも消してしまったと思っていた二人だけど、実は消していないものがあった。と、希望を残すラストになっていた。しかしスタッフロール後にシーンを入れる手法は意地が悪い。知らずにいる人がかなりいるはずだ。映画館で観てたって席立っちゃうでしょ。